(報告)「臨床環境学コンサルティングファームと今後の研究教育」
日時: | 2014年3月8日 10:30 – 11:30 |
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場所: | 愛知県蒲郡市 |
名古屋大学グローバルCOEプログラム「地球学から基礎・臨床環境学への展開」
2013年度若手リトリート(2014年3月7-8日、愛知県蒲郡市)
総合討論(2014年3月8日 9:00 - 11:30)
セッション3:臨床環境学コンサルティングファームと今後の研究教育
名古屋大学グローバルCOEプログラム「地球学から基礎・臨床環境学への展開」では、2013年度若手リトリートと呼ばれる大学院生、研究員、教員の成果報告と討議のための集まりの中で、「臨床環境学コンサルティングファームと今後の研究教育」について以下のような討議を行いました。
臨床環境学コンサルティングファームが取り組む事業
- 臨床環境学コンサルティングファームの事業としては大きく2種類が想定される。1つは持続可能な社会づくりに関する短期的直接的対応としての自治体等からの受託研究、企業等との共同研究の実施で、もう1つは長期的間接的対応としての人材育成事業
- 人材育成事業には大学や企業の教育・研修プログラムに対するテキストの提供やコース作り
- これまで名古屋大学グローバルCOEプログラムが大学院博士課程学生に対して行ってきた臨床環境学研修(ORT)の知見の提供
- 大学をクライアントとして教育プログラムを提供
- 環境問題に関心のある大企業のCSR部門、あるいは新入社員・役員を対象としてORT型の研修を提供
- 自治体や海外政府も対象になりえる
- テキストでは問題を診断する上で重要なメカニズムについて典型事例を使って説明するやり方が良い
- コンサルティング事業を行ううえでも独自の診断の手引書やデータベースを構築する。これまでのグローバルCOEプログラムで得られた診断ツールである「問題マップ」と呼ばれる因果関係図を、課題ごとにさらに発展させていく
- 外部資金の確保が難しいが重要な研究テーマについては自主研究として取り組んでいく
大学がコンサルティング事業を行うことの利点と課題
- 大学が受託研究・受託事業といったコンサルティング業務を行う場合、既存のコンサルタント会社との差別化が必要。民間ができないことをやる。科学的な知見に基づいた提言、時にはクライアントに歯止めをかけることなど
- 主体性のあるクライアントの場合は品質保証が必要。受身的なクライアントの場合、ファシリテーションを通じた主体性構築も行う
- 大学がコンサルティング事業を行うことの長所は、学問分野との連携によって眠っている知識を活用できること、多くの分野間の連携が可能なこと
- 逆に大学がコンサルティングを行う場合の短所として、学問研究への時間がとりにくくなること、大学のビジネス感覚のなさ、がある
- コンサルティング事業を展開することで得られるものとしては、資金、学生教育・研修の機会、新たなフィールドでのデータ、新しい研究テーマやアイディア、がある
- 課題としては、成果に対する責任、社会的公正・倫理の確保、教育・研究とのバランス、がある
- 対価を受けてコンサルティングを行う場合に、研究の自由度がどれだけあるのかというジレンマがある。クライアントの意向や期待に拘束される場合もある
- 新たな事業を行うには、人、金、アイディアが必要で、3つのうち2つがあればあとの1つも着いてくるという話がある。臨床環境学コンサルティングファームにおける優先順位付けの戦略が必要
大学外部へのプロモーション
- 地域からの相談を待っていると遅い場合がある。特に診断と治療のうちの診断に関して。クライアントが気づいていないが実は必要なことについて、基礎データとともにコンサルティングすることが有効。そのためにもコンサルティングの背景となる基礎・臨床環境学の構築を大学として実施することが重要
- トップ営業を行う
- ホームページを対外コミュニケーションやマーケティングのために積極的に活用する
大学内部でのプロモーション
- より多くの教員が関心を持てるように大学内で進行中のコンサルティングファーム事業の紹介セミナーを行う
- 既に社会連携型の研究・事業を行っている教員の参画だけを想定するのでなく、ポテンシャルのある教員のニーズをすくい上げる仕組みが必要。定期的に臨床環境学コンサルティングファームが実施している事業を紹介する場を設けるなど
大学院生のコンサルティング事業への関与の仕方
- 大学院生がコンサルティングファームの社会連携研究・事業に関与するのは実務経験を積むのに良い機会だが、責任の所在の明確化と、仕事の仕方についてのマニュアルが必要