持続可能な地域づくりのために、地域と大学を結ぶ新しいプラットフォーム

臨床環境学コンサルティングファーム ワークショップ(終了しました)

日時: 2014年3月3日(月)15:00-17:30
場所: 名古屋大学大学院環境学研究科 環境総合館レクチャーホール(名古屋市千種区不老町)

臨床環境学コンサルティングファーム ワークショップ

「大学が地域の課題にどう答えるか」

(実施概要)

2014年4月に名古屋大学大学院環境学研究科附属持続的共発展教育研究センターの一部門として設立される臨床環境学コンサルティングファームの構想について、学内外の方々と対話してプラットフォームづくりの第一歩とするとともに、関係者間でのネットワーク作りを行うことを目的として、環境総合館レクチャホールで2014年3月3日(月)15:00-17:30 に、名古屋大学グローバルCOEプログラム(地球学から基礎・臨床環境学への展開)及び環境学研究科主催、生命農学研究科共催でワークショップ「大学が地域の課題にどう答えるか」を開催しました。自治体、民間企業、シンクタンク、非営利活動団体、国際機関より12名、学内より12名、計24名の参加を得ました。

冒頭、高野雅夫環境学研究科准教授より、臨床環境学コンサルティングファームと本ワークショップの目的について説明がありました。研究、教育に次ぐ第三の大学の使命としての社会貢献のために持続的共発展教育研究センターが設置されること、センターが交通・都市国際研究部門と臨床環境学コンサルティングファーム部門からなること、及び後者が特に教育部門として機能することが説明され、臨床環境学とは何かについて、仮説転がしと問題マップをキーワードとして紹介がありました。その後、コンサルティングファームの機能について、ワンストップ相談窓口、連携活動のプラットフォーム、及び人材育成・キャリア開発の観点から説明があり、持続可能な地域づくりプロジェクトの具体例と大学院博士課程における教育事例の紹介がありました。また、臨床環境学コンサルティングファームのミッション案が提示されました。一例としては「持続的な地域づくりに携わる多様な主体が集まり、語り、お互いに学びあい、その結果として新しい展望が見出される場となる」が挙げられます。最後に、本ワークショップの進め方について説明がありました。

続いて、社会連携による研究教育の事例紹介が行われました。山崎真理子生命農学研究科准教授からは、GCOEで実施されてきた都市の木質化プロジェクトについて紹介がありました。2014年度からは名古屋市内錦二丁目長者町を拠点として「都市木クラブ」を立ち上げ、木質化に関する相談に応じる構想が紹介されました。加藤博和環境学研究科准教授からは、伊勢湾流域圏における臨床環境学研修(On-site Research Training (ORT))の紹介がありました。臨床環境学コンサルティングファームは、大学の研究・教育を社会と一緒に行うことで、社会・地域に貢献するとともに、研究を発展させ、人を育てるという3つの側面を持つべきであるとの考えが示されました。竹内恒夫環境学研究科教授からは、市民参加型環境プロジェクトの社会実験と題して、広く学生、一般市民、自治体・NPOなどを巻き込んで実施された社会実験である、名チャリ、リユースびん、リユースステーション、及びリユース促進コベネフィットCO2削減の各プロジェクトについて紹介があり、成果と課題が示されました。

以上の事例紹介のあと、4つのグループに分かれて、大学が地域の課題に答える上でのコンサルティングファームの役割に関する討議を行いました。Aグループでは、これまで自治体が大学の先生に相談を持ちかけても、個人の守備範囲が狭く問題の全体に関わってもらえることができなかったことから、統合的かつ臨床的にコンサルティングファームが社会の課題に取り組むことに期待する意見がありました。また持続的な地域づくりは狭義の環境問題にとどまるものでないことから、健康など広い範囲の地域の課題に対する大学の対応への期待も示されました。さらに大学には科学と政策とを橋渡しする役割が望まれるとの意見が出されました。

Bグループでは、地域の困りごとについて大学を交えて解決を図るうえで、外部者・専門家としての視点で分析すること、様々なデータを蓄積・統合・整理すること、企業・NPO・自治体のネットワークに対する中間支援組織となること、などが大学の役割として考えられるという意見が出されました。

Cグループでは、都市の木質化プロジェクトのまち(建築)と森をつなぐ試み、豊田市おいでん・さんそんセンターの都市といなかをつなぐ活動、及び企業(ブラザー工業)の環境・社会貢献活動を題材としつつ、社会の問題解決に市民、学生、企業・労組が関わることで、人々のくらしや自然についての体験が得られる貴重な機会となるととともに、自分ごととして捉える責任感を持った人づくりとなったり、学生の興味・研究・キャリアにつながったりしていることが論じられました。また継続的な問題解決のためにビジネスの仕組みづくりや企業のメリットが必要との意見がありました。

Dグループでは、本業で社会貢献している中小企業と大学が連携することで、学生がインターン先を得たり、キャリア開拓できるようにしたりするとともに、企業も学生獲得につながるメリットが得られるといったアイディアや、企業が大学と連携して調査研究を企画提案することで実施体制を強化でき、特に博士課程学生が実質的な関与をすることで企業と学生の双方がメリットを得るケースがあることが示されました。またコンサルティングファームのあるべき姿は、社会のニーズと大学のシーズを具体的にマッチングさせて事業を行っていく中で見えてくるのではとの意見が出ました。

最後に各グループから1名ずつグループ討議の内容や、ワークショップに参加しての感想を語ってもらい、全体で共有しました。その後、高野准教授よりまとめの言葉があり、このように立場が異なる人が集まって話をするだけでもいろいろな接点が生まれ、新たなことを始められる手応えを得たとして、本ワークショップ開催の意義が確認されました。閉会にあたり、林良嗣教授(持続的共発展教育研究センター長就任予定)から、産官公学の横のつながりを形成することで、GCOEで進めてきた臨床環境学の内容の発展を目指したいという挨拶がありました。

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(プログラム)

1. 目的

 2014年4月に名古屋大学大学院環境学研究科に持続的共発展教育研究センターの一部門として設立される臨床環境学コンサルティングファームの構想について、学内外の方々と対話・討議してプラットフォームづくりの第一歩とするとともに、関係者間でのネットワーク作りを行う。

2. 主催者

(主催)名古屋大学グローバルCOEプログラム「地球学から基礎・臨床環境学への展開」

(主催)名古屋大学大学院環境学研究科

(共催)名古屋大学大学院生命農学研究科

3. 次第

(1) 臨床環境学コンサルティングファームと本ワークショップの目的 15:00 - 15:15

高野雅夫 環境学研究科准教授

(2) 社会連携による研究教育の事例紹介 15:15 - 16:00

Ÿ 都市の木質化プロジェクト 山崎真理子 生命農学研究科准教授(15分)

Ÿ 伊勢湾流域圏における臨床環境学研修 加藤博和 環境学研究科准教授(15分)

Ÿ 市民参加型環境プロジェクトの社会実験 竹内恒夫 環境学研究科教授(15分)

(3) 大学が地域の課題に答える上でのコンサルティングファームの役割に関するグループワークと全体共有 16:00 - 17:30

Ÿ グループ討議(45分)

Ÿ 全体共有・討議(45分)