ホームセンターからのお知らせ豊山町との連携事業報告:「はやぶさ2のサイエンス」
共発展センターでは、環境学研究科との連携協定締結先の一つである豊山町(愛知県)との連携事業の一環として、今年度官学連携講座・オープンキャンパス「名古屋大学」を実施しています。その第1回として、以下のような生涯学習講座を実施しました。
日時:2015年5月19日(火)10:00-11:30
場所:豊山町社会教育センター 3階 視聴覚室
プログラム:「はやぶさ2のサイエンス」
講師:渡邊誠一郎(名古屋大学大学院環境学研究科・教授)
渡邊先生は国立研究開発法人の一つである宇宙航空研究開発機構(JAXA)における小惑星探査機「はやぶさ2」事業のプロジェクト・サイエンティストでもあります。太陽系における太陽、惑星、小惑星などの説明とともに、小惑星の探査を含む惑星科学が宇宙の生命の進化を知ろうとしていること、また惑星どうしを比較することから地球について知ろうとしていることが紹介されました。
小惑星は火星の軌道と木星の軌道の間にある小惑星帯に存在する小天体で、現在70万個近く見つかっており、まだ増え続けていること、その全部の質量は地球の質量の2600分の1で、およそ海水の総質量に相当すること、また月の質量の32分の1程度であることが説明されました。一方で、最大の小惑星ケレスの質量は、70万個近くの全ての小惑星の質量のおよそ4割を占めており、1つの小惑星がほとんどの質量を占めている様子は、資本主義社会で少数の資本家が資本を独占している様子と同じであって、小惑星の形成過程と資本の形成過程を記述する数学はまったく同じであることが紹介されました。小惑星には、明るさに違う2つの種類があり、太陽からの距離や、組成(水・有機物を含むかどうか)が違うことが説明されました。そして、小惑星のかけらが地球に落ちてきた場合、それを隕石と呼ぶが、直径が十数キロ程度の隕石であっても、人口密集地に落下すると爆発に伴う衝撃波などで大きな被害が起こりうること、そのため隕石の監視が行われていることが紹介されました。
その他、はやぶさ2の兄貴に相当する「はやぶさ」がサンプルを持ち帰った小惑星(通称「らっこちゃん」;形がらっこに似ている)が「がれき天体」であることが分かったことが紹介されました。対して、はやぶさ2の科学目標が、太陽系の初期進化を明らかにすること、また小惑星から地球にどのように物質が供給されるかを明らかにすることであると紹介されました。また、はやぶさ2は、小惑星「の」科学でなく、小惑星「からの」惑星科学を目指して、宇宙、地球そして生命の謎に挑む研究事業であることが強調されました。特に、金属・水・有機物の相互作用や反応が生命の発生に重要な役割を果たしたと考えられていること、その過程の研究に小惑星探査が貢献すると期待していることが説明されました。
続いて、探査スケジュールとして、はやぶさ2が2014年12月に打ち上げられ、1年間地球の周りを回って勢いをつけて目標とする小惑星に向かうこと、2018年に目標に到達してさまざまな調査をすること、2019年には小惑星を離れて、2020年12月には地球に戻る計画となっていることが紹介されました。また、小惑星で想定されている調査の具体的なやり方や使われる技術について動画で紹介されました。はやぶさはミッションを終えた後再利用はされませんでしたが、はやぶさ2はサンプルを回収するのとは別の目標で再利用される予定であることも紹介されました。
講義の中では、本を読んだり講義を聴いたりするだけでなく、科学博物館の天体観望会などで、望遠鏡を使ってぜひ自分の目で惑星や衛星などの天体をみてほしい、感動すると思う、とのメッセージが述べられました。