名大共発展センター・ニュースレター
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ニュース:
【世界首長誓約/日本】日本計画行政学会スペシャルセッションに3市長が登壇
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【世界首長誓約/日本】一宮市が署名し誓約自治体は49に
ニュース:
「臨床環境学®」の登録商標の存続期間を更新
イベント:
「地域公共交通コーディネーター・プロデューサー養成プロジェクト」
 第2期が開始
イベント:
第9期愛知県創生研鑽会最終報告会で研究科長から参加者に修了証を授与
教育活動:
【臨床環境学研修(ORT)】土木計画学研究発表会・
 春大会の優秀ポスター賞を受賞
編集後記
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【世界首長誓約/日本】日本計画行政学会スペシャルセッションに
 3市長が登壇


 9月6日(金)、愛知大学名古屋キャンパスで開催された日本計画行政学会第47回全国大会において、同学会、一般社団法人地域問題研究所及び世界首長誓約/日本の共催で、スペシャルセッション「『世界気候エネルギー首長誓約』の首長たちの挑戦―地方自治体が率先する気候政策―」を開催しました。誓約自治体から、富谷市の若生裕俊市長、亀岡市の桂川孝裕市長、みよし市の小山祐市長に登壇いただきました。3名の市長による各市の施策の紹介に続いて、立ちはだかる課題と今後の展開などを議論しました。
 特徴的な取組として、富谷市では、2017年にみやぎ生協と採択された水素サプライチェーン実証事業を継続しています。2019年には自然環境と再生可能エネルギーの設備が調和する環境を作っていくため、太陽光発電設置に関する条例を宮城県内で最初に制定しました。亀岡市は、家庭ごみの名称を「燃やすしかないごみ」と変更して13%削減、「埋め立てるしかないごみ」として25%削減しました。また、2020年に国内初のプラスチック製レジ袋提供禁止に関する条例を制定、2021年から施行しました。みよし市は今後新築する公共施設は全てZEB(ゼロエネルギービルディング)化の基本方針、また、若手職員を中心に部局横断でリスク・適応策を考えるワークショップを行い、各々の分野の必要事項を話し合いました。
 市役所内の課を超えた横断的な連携の秘訣や市民への発信の工夫の質問に、若生市長は「市長の環境問題の取組に対する本気度を示すこと。市民一人一人の行動変容には時間がかかるがあきらめずに率先して発信していく。」、桂川市長は「亀岡市では芸術が環境や農業と介在するようになっている。『霧の芸術祭』というプラットフォームを作りアート活動を通じ発信した。」、小山市長は「将来の絵姿を想像し示していくこと。意図をしっかり伝えた上で施策を打つ。市民が自分事としてストンと腑に落ちるかどうかが非常に大事だ。」と述べました。
 後半には、世界首長誓約の新たな課題であるエネルギー貧困について世界首長誓約/日本事務局長の杉山範子特任教授が情報提供を行い、市長たちに意見を伺いました。最後にモデレータの兵庫県立大学の増原直樹准教授が全体をまとめ、「これまでマイナスだと思われていた側面を逆転する発想の転換が、気候変動対策にも重要と改めて気づかされた。また、市の決意や、市長の本気度を誓約で示すことが、市民や事業者にも通じていった。最終的には国や世界も変えていく可能性も見えてきたかと思う。そして、気候変動政策は、環境だけ、エネルギーだけといった取組ではなく、農業や断熱、時には芸術も一緒に波及効果を高める、従来バラバラだと思われていた政策の相乗効果が非常に強く求められている。」と締めくくりました。市長のみなさんの熱意が伝わる充実したセッションでした。


右から、青山公三所長(地域問題研究所)、 小山祐市長(みよし市) 、桂川孝裕市長(亀岡市)、若生裕俊市長(富谷市)、増原直樹准教授(兵庫県立大学)、杉山範子特任教授(世界首長誓約/日本 事務局長)

右から、青山公三所長(地域問題研究所)、 小山祐市長(みよし市) 、桂川孝裕市長(亀岡市)、
若生裕俊市長(富谷市)、増原直樹准教授(兵庫県立大学)、杉山範子特任教授(世界首長誓約/日本 事務局長)

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【世界首長誓約/日本】一宮市が署名し誓約自治体は49に


 一宮市(愛知県)の中野正康市長は、9月26日(木)、世界首長誓約/日本に署名し、国内49番目の誓約自治体となりました。中野市長は、「エネルギーのあり方は、まちづくり全体に関わる話。しっかりと市政の舵取りを行い、市民にとって幸せな地域をつくっていきたい。」と挨拶しました。
 一宮市は、2023年に設立された「いちのみや未来エネルギー会社」の共同出資者の一つであり、環境センターからの熱や市内の太陽光発電などを使用し、市の公共施設に電力を供給、2024年からは市役所にも電力供給し、エネルギー地産地消の取組みを着実に進めています。
 今回の誓約は、一宮市が名古屋大学大学院環境学研究科と「連携・協力に関する協定」を7月9日(火)に締結した際に、横山智研究科長が誓約への参加を呼びかけたことが契機となりました。横山研究科長は、「この誓約を契機に、市民の皆様の意識が高まり、この美しい豊かな生活環境を次世代に引き継ぐための積極的な行動につながることを期待します。」と挨拶しました。杉山事務局長は、「脱炭素社会は、環境部局だけではなく、あらゆる部局が一緒になって取り組んでいかなければならない課題。今年の夏の猛暑を経験したように適応策も重要。中野市長のリーダーシップで各局と横断的な取組みを進め、世界首長誓約を大いに活用してください。」と述べました。誓約式の様子は、地域のケーブルテレビで放送されました。

一宮市の誓約式にて中野正康市長(中央)と横山研究科長(左)、杉山事務局長(右)

一宮市の誓約式にて中野正康市長(中央)と 横山研究科長(左)、杉山事務局長(右)

「世界首長誓約/日本」の詳細は、こちらのウェブサイトをご覧ください。
https://covenantofmayors-japan.jp/

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「臨床環境学®」の登録商標の存続期間を更新


 名古屋大学環境学研究科が生み出した言葉“臨床環境学®”は現場で起こる環境問題について、研究者たちが分野を横断し、多様な関係者とともに問題の診断から治療までを行う方法論に関する学問を指します。2014年11月7日より名古屋大学の登録商標となり、今年で10年経ちました。この度、登録商標の存続期間が更新され、2034年11月7日までとなりました。 これまでは「臨床環境学®」という書籍の出版、「臨床環境学®研修」という授業、「臨床環境学®コンサルティングファーム」など、“臨床環境学”関連の取り組みを多く行ってきました。今後より広く世に知られるように活動していきますので、どうぞよろしくお願いいたします。

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イベント

「地域公共交通コーディネーター・プロデューサー養成プロジェクト」
 第2期が開始


  共発展センター主催の「地域公共交通コーディネーター・プロデューサー養成プロジェクト」が、昨年度に続き今年度も第2期として開始しました。地域公共交通確保が全国的に問題となる中、その解決をリードできるコーディネーター・プロデューサーを育てるべく、センターの加藤博和教授が代表となって、現場で活動に取り組む全国の大学・高専教員18名が集まり、プロジェクトを推進しています。
 具体的には、地域公共交通に関する基本的事項を幅広く学ぶベーシックコースを10~2月に、レポート提出や効果測定をクリアした修了者のみ参加できるアドバンスドコースを6~10月に行い、現場で「公共交通の臨床医」として活動できる力をつけていきます。国土交通省「共創・MaaS実証プロジェクト」の事業に採択され、昨年度に続き国庫補助を受けて実施しています。
 今年度のベーシックコースは10月11日(金)に開始し、座学のリレーレクチャーが1月まで第2・4金曜日夜に毎回2コマ、合計15コマ開講し、名古屋大学での対面、およびオンラインの生聴講・見逃し聴講も可能です。また、現場の状況を見に行く機会であるフィールドスタディも11月下旬から始まり、合計40か所ほどで行う予定です。約180名の受講者が精力的に取り組んでいます。

名古屋大学  福本雅之  客員准教授よりリレーレクチャー

名古屋大学 福本雅之 客員准教授よりリレーレクチャー

詳細は、こちらのウェブサイトをご覧ください。
https://transproducer.net/

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第9期愛知県創生研鑽会最終報告会で研究科長から参加者に修了証を授与


 愛知県創生研鑽会は、愛知県内企業の若手社員が参加し、愛知県・名古屋市が抱えるさまざまな政策課題に対し、調査・分析・提言を行う産学官連携の人材育成プログラムです。東京日動火災保険株式会社が主催し、環境学研究科、愛知県、名古屋市等が共催して毎年行われています。環境学研究科でも社会人に対するリカレント教育を進める一環として、今年2月に東京日動火災保険株式会社と連携協定を結び、この研鑽会を進めてきました。アドバイザーとして共発展センター長の高野雅夫教授と社会環境学専攻の上村泰裕准教授が参加しました。今期は36名の参加者の中に5名の本研究科の博士前期課程学生も参加して社会人と共に学ぶ機会を得ました。
 「愛知の元気を日本一にするためにできること」をメインテーマに6つのチームに分かれて、それぞれ「愛知県からの転出超過について」、「安心して結婚・出産・子育てができる環境づくりについて」、「カーボンニュートラルな社会づくりについて」という課題に取り組みました。10月22日(火)に最終報告会が行われ、各チームから独創性あふれる政策提言が行われました。その後、横山研究科長から参加者全員に修了証が授与されました。
 各チームは内閣府主催地方創生アイデアコンテストに応募し、そのうちの1チームが中部地区代表に選ばれ内閣府での最終選考に臨むこととなりました。参加した学生からは社会人と一緒に活動することで「プロジェクトの進め方、分業と協業のバランスなどを学ぶことができた」という声があり、将来のキャリア形成に役立つ経験になりました。

愛知県創生研鑽会最終報告会の様子

愛知県創生研鑽会最終報告会の様子

 

横山研究科長から参加者全員に修了証授与

横山研究科長から参加者全員に修了証授与

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イベント

【臨床環境学研修(ORT)】土木計画学研究発表会・
 春大会の優秀ポスター賞を受賞


 2024年5月25日(土)~26日(日)に北海道大学で開催された第69回土木計画学研究発表会・春大会において、環境学研究科都市環境学専攻博士後期課程2年の佐藤千江さんが、2023年度統合環境学特別コースの臨床環境学研修(ORT)の研究成果をまとめ発表した研究「観光業と連携した地域内交通手段創出に向けた一提案 - 三重県鳥羽市相差町を事例に -」が優秀ポスター賞を受賞しました。
 本発表の対象地域である三重県鳥羽市相差(おうさつ)町は、宿泊施設のチェックイン・チェックアウトの時間帯になると宿泊客用の送迎車両が近鉄・JR鳥羽駅との間を多数往来し、片道30分の長い距離を市営の路線バスと並走していますが、宿泊施設従業員の高齢化、運転手不足のため、維持が難しくなっています。一方、町内の宿泊施設・飲食店が連携して地域内を周遊するオンデマンド交通の実証実験を行いましたが、本格実施には至りませんでした。
 昨年度のORTにおいては、上記の地域での取り組みを再検討することで、観光客・地域住民いずれも使える移動手段の確保が可能になると考え、宿泊施設従業員や実証実験関係者、鳥羽市役所職員へのヒアリング調査を実施し、地域交通や実証実験の課題を明らかにしました。それらを踏まえ、オンデマンド交通の運行スタイルを実証実験時から改善し、だれでも利用できる公共交通とすることで、路線バス・送迎バスの並走、町内の移動手段確保の課題を解決する施策をまとめ、2024年2月に鳥羽市役所で開催したORT成果報告会で提案しました。論文には、報告会で鳥羽市役所職員をはじめとする参加者の方々からいただいたフィードバックも掲載しています。

受賞した2023年度 ORT受講生の佐藤千江さん

受賞した2023年度 ORT受講生の佐藤千江さん

 

「統合環境学特別コース」の詳細はこちらのウェブサイトをご覧ください。
https://ercscd.env.nagoya-u.ac.jp/jpn/course/onsite/

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編集後記

 本号では、今年度の共発展センターのプロジェクトやイベントの報告などをお届けします。教育活動として行っている臨床環境学研修の研究成果も学会発表し、数多く受賞しています。今年度の報告会は2025年2月に行う予定です。引き続きご支援いただきますようお願いいたします。

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名古屋大学

編集 共発展センター・ニュースレター 編集部

名古屋大学大学院環境学研究科附属持続的共発展教育研究センター 事務局
〒464-8601 名古屋市千種区不老町 名古屋大学環境総合館421号室
E-mail : cesfirm@ercscd.env.nagoya-u.ac.jp