名大共発展センター・ニュースレター
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ニュース:
愛知県一宮市と「連携・協力に関する協定」を締結
ニュース:
【世界首長誓約/日本】バッジ交付式開催 新たに3自治体がコンプライアントバッジ取得
ニュース:
世界気候エネルギー首長誓約アジア主催、国際ワークショップに8自治体が参加
教育活動:
【臨床環境学研修(ORT)】現地見学会を三重県鳥羽市で実施
センター教員による新刊書籍のご紹介:
『中山間地域を存続させるための 移住・定住/空き家活用取り組み実践ガイド』
共発展センター長 高野雅夫 著
社会と連携する私の研究・教育:
環境学研究科 地球環境科学専攻 准教授 平野 恭弘
編集後記
NEWS

愛知県一宮市と「連携・協力に関する協定」を締結


 環境学研究科は、愛知県一宮市と「連携・協力に関する協定」を結ぶこととなり、7月9日(火)に一宮市役所本庁舎6階の市長応接室にて協定締結式を開催し、中野正康市長と環境学研究科長の横山智教授が協定書に署名しました。
 一宮市は名古屋市と岐阜市の中間に位置し、人口約38万人、面積約113.8km²の地域で、繊維産業を基盤に発展してきました。2021年に中核市に指定され、持続可能な地域づくりが重要視されています。持続的共発展教育研究センターの加藤博和教授は、2007年より一宮市地域公共交通会議委員、2022年からは会長として一宮市の地域公共交通の維持・活性化に取り組んできました。一宮市職員と協力し、市内バス(名鉄バス、i-バス)やi-バスミニの利便性と経営効率の向上に努めてきました。この協力関係を背景に、環境や観光などの広範な分野での協力関係を構築するために今回の協定が締結されました。
 締結式では、中野市長が「名古屋大学の協力を得て、一宮市の良さを生かした将来のまちづくりを進めたい」と述べ、横山研究科長は「学術研究活動で培った知見を活かし、一宮市のまちづくりを共に議論していきたい」と抱負を語りました。


愛知県一宮市と「連携・協力に関する協定」を締結

愛知県一宮市と「連携・協力に関する協定」を締結

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【世界首長誓約/日本】バッジ交付式開催 
 新たに3自治体がコンプライアントバッジ取得


 5月30日(木)、「世界首長誓約/日本」の「バッジ交付式と誓約自治体の実践報告」を駐日欧州連合代表部(東京都港区)で開催しました。「世界首長誓約/日本」に誓約した自治体は毎年または2年ごとに進捗状況を報告し、その段階に応じた「バッジ」が世界事務局(ブリュッセル)から交付されます。2023年にモニタリング報告を提出した誓約自治体のうち、コンプライアントバッジ(緩和策・適応策それぞれ3段階をクリア)を取得した12自治体へのバッジ交付式を行いました。交付式では駐日欧州連合代表部のジャン=エリック・パケ大使がプレゼンターとなり、新たにバッジを取得したニセコ町の片山町長、鎌倉市の千田副市長、亀岡市の桂川市長にコンプライアントバッジを授与しました。
 続いて、ニセコ町長、鎌倉市副市長、亀岡市長によるパネルディスカッションが行われ、誓約の経緯、バッジ取得までの取組み、今後の抱負等が熱く語られました。さらに、バッジを更新した自治体担当者により、リレー形式でプレゼンが行われ、優れた気候政策の実践状況が報告されました。
 2023年の報告でコンプライアントバッジを交付された自治体は次のとおりです(誓約順)。
 【新規取得】ニセコ町、鎌倉市、亀岡市
 【更新】東京都、横浜市、広島市、富山市、北九州市、所沢市、
    京都市、木更津市、新潟市
現在、日本国内でコンプライアントバッジを取得している24自治体は、誓約自治体の半数となり、海外からも高く評価されています。

バッジ交付式にて (右から) 駐日EU大使、
亀岡市長、鎌倉市副市長、ニセコ町長、杉山事務局長

バッジ交付式にて (右から) 駐日EU大使、
亀岡市長、鎌倉市副市長、ニセコ町長、杉山事務局長

首長たちとのパネルディスカッション

首長たちとのパネルディスカッション

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世界気候エネルギー首長誓約アジア主催、
国際ワークショップに8自治体が参加


 「世界気候エネルギー首長誓約」(以下、GCoM)のアジア地域のワークショップが、バンコク(タイ)で6月12日(水)~13日(木)に開催され、アジア8カ国の誓約自治体や地域事務局の関係者が集まりました。日本からは8自治体(ニセコ町、所沢市、富山市、岡崎市、豊田市、みよし市、鈴鹿市、亀岡市)が参加しました。
 1日目のパネルディスカッションでは、パネル2「自治体での循環経済と廃棄物処理」に亀岡市、パネル3「自治体での持続可能なモビリティ」に富山市、パネル4「自治体におけるエネルギー転換」には所沢市、パネル5「温室効果ガス緩和策における報告」にはニセコ町の担当者が登壇し、取組みを発表しました。最後のパネル「GCoMパートナーによる都市の将来の気候変動対策への貢献」には各地域事務局の代表と日本事務局長の杉山範子特任教授が登壇、これまでの日本国内の成果と意義を報告しました。2日目のポスターセッションは富山市、豊田市、岡崎市、みよし市及び鈴鹿市の担当者が英語で発表し、参加者たちは真剣に聞いていました。
 国際ワークショップを通じ、自治体の取組みや経験をアジアの自治体と共有する重要性、気候変動対策の緊急性等、参加者はGCoMの連合を再認識し、取組みへの想いを新たにしました。

世界気候エネルギー首長誓約アジア地域の国際ワークショップ(バンコク)

世界気候エネルギー首長誓約アジア地域の国際ワークショップ(バンコク)

2日目のポスターセッション

2日目のポスターセッション

 

「世界首長誓約/日本」の詳細は、こちらのウェブサイトをご覧ください。
https://covenantofmayors-japan.jp/

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イベント

【臨床環境学研修(ORT)】現地見学会を三重県鳥羽市で実施


 当センターが実施している授業「臨床環境学研修(ORT:On-site_Research Training)」の現地見学会が6月27日(木)~29日(土)に実施されました。今年度のフィールドは昨年度と同じ三重県鳥羽市で、博士後期課程学生3名と教職員9名が参加しました。
 ORTの趣旨は、地域の持続可能性に関わる問題を学生が自主的に見つけ、現地の現状把握(=診断)と解決方法の提案(=処方)を行うことです。今回の見学会では、鳥羽市の海洋文化・資源を活用した観光と教育、離島の生活と文化、人口減少に対する移住・定住施策、再生可能エネルギーの現状と対策などのお話を聞きました。実際の現場見学および行政や地域住民との交流により、山から海へ、自然環境から産業へ、環境・産業から人へ、移住者や観光客から地域住民へ、様々な分野の相互関係と課題を認識し理解することができました。
 見学会を通じて得られた知見や課題を受けて研究テーマを設定し、調査分析を行う予定です。

中村市長(右から2番目)と学生たち

中村市長(右から2番目)と学生たち

地域案内人のガイドで答志島を巡る

地域案内人のガイドで答志島を巡る

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イベント

『中山間地域を存続させるための
 移住・定住/空き家活用取り組み実践ガイド』 共発展センター長 高野雅夫 著


 全国の空き家率は13%を超え、空き家の数は増えるばかりです。その中には廃屋になって危険な状態になるものもあり、そうなる前に活用することが肝心です。中山間地域ではもう半世紀以上も人口減少が続き、多くの集落で限界集落から集落消滅に向かう動きが止まりません。
 しかし、2010年頃から都市から若い世代が移住してくる動きが顕著になり、空き家を活用して移住・定住支援ができると地域にとっては存続の展望が見えてきます。家主さんにとっても良いと思われるのですが、意外にも家主さんの多くは貸したり売ったりする気持ちがなく、空き家のままにしています。それはなぜなのか。家主さんの気持ちを活用に向けるにはどう働きかければ良いのか。家主さんが活用しようと思った時に、スムーズに空き家と移住希望者をマッチングする仕組みはどのようなものか。
 本書はその答えを求めて、10年以上にわたり豊田市をはじめとする全国の事例について中山間地域の住民・自治体職員とともに超学際研究を進めた成果を、実践ガイドという形にまとめたものです。家主さんが空き家を活用しないでいる理由は六つあり、それにほぼ尽きるということがわかりました。それらを解決する方策も本書の中で解明されています。中山間地域だけでなく都市の空き家問題の解決にも応用できる内容です。ぜひご一読ください。

発行 一般社団法人おいでん・さんそん (2024年3月31日)

発行 一般社団法人おいでん・さんそん (2024年3月31日)

 

詳細はこちらのウェブサイトをご覧ください。
https://amzn.asia/d/7nzgBVg

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社会と連携する私の研究・教育

環境学研究科 地球環境科学専攻 准教授 平野 恭弘


 私は森で樹木の根っこの研究をしています。樹木の根っこは地上にある葉や幹などの大きな体を支えていますが、根っこの大きさは樹木1本の2割から3割も占めています。つまり根っこも炭素の貯蔵庫となっているのです。見えない地下の世界では、私たちの暮らしを日々支えてくれています。根っこが十分に発達しない樹木では、幹や葉など地上部と根っこのバランスを崩し、倒木化するリスクが高まります。近年の気候変動に伴う局所的な豪雨や強風などにより、森の中だけでなく都市の街路樹などでも大きな樹木が倒木化することが危惧されています。また森の斜面では根っこが表層土壌に成長することで養分の豊かな土壌が流出したり崩れたりすることを防いでくれています。
 このような樹木の根っこが地下のどこにどのように成長しているかについて、土を掘らずに葉や幹など地上の様子のみから推定することは未だに容易ではありません。根っこに関する知見は林業などのために調べられてきた幹の成長などに比べて、あまり蓄積されていないのが現状です。そこで私たちは、根研究学会と協働で「根っこのふしぎな世界」や「大きな木の根っこ」などの解説本を通して根を知ってもらう取り組みを行っています。樹木の根っこの初めての教科書として「森の根の生態学」を刊行し、根っこのきほんを学べる基盤つくりをしています。また樹木の根っこを実際に掘ることについては、現場の根っこの状態に一番詳しい樹木医さんと協働しながら進め、土の中での根っこの形や様子を維持しながら掘り出し、それらの構造を解析することに成功しています。さらに土を掘らずに根っこの位置や大きさについて物理探査法を用いて推定することも取り組んでいます。樹木の根っこが土壌を支える力を評価することで、表層崩壊や倒木などの減災に関するニーズに応えていきたいと思っています。

 

大きなスギの根っこの試料

大きなスギの根っこの試料

掘り取りされた最大深さ2.4 mのクロマツ根系

掘り取りされた最大深さ2.4 mのクロマツ根系

 

樹木の根っこの解説本

樹木の根っこの解説本

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編集後記

 本号では、今年度のプロジェクトやイベントの報告などの情報と共発展センターに所属する教員の研究内容をお届けします。教育活動として行っている臨床環境学研修については、今後もその関連調査や報告会をニュースレターでみなさまにお伝えします。引き続きご支援いただきますようお願いいたします。

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名古屋大学

編集 共発展センター・ニュースレター 編集部

名古屋大学大学院環境学研究科附属持続的共発展教育研究センター 事務局
〒464-8601 名古屋市千種区不老町 名古屋大学環境総合館421号室
E-mail : cesfirm@ercscd.env.nagoya-u.ac.jp