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センターからのお知らせ

2015年07月02日 豊山町との連携事業報告:「なぜ若者はいなかを目指すのか?」

環境学研究科が連携協定を結んでいる豊山町(愛知県)との連携事業の一環として、豊山町が実施する高齢者向け生涯学習講座「豊寿大学」の授業の一こまを、以下のとおり環境学研究科が担当しました。48名の豊山町民の方々が参加され、熱心にうなずきながら受講されました。

日時:2015年7月2日(木)10:00-11:30
場所:豊山町社会教育センター3階視聴覚室
テーマ:なぜ若者はいなかを目指すのか?里山への移住・定住最前線
担当:環境学研究科地球環境科学専攻教授・高野雅夫

持続可能ないなかをどのようにつくっていくか、実践的に研究している。日本ではいなかから都市への人口移動(移住)がずっと続いてきた。1960年頃にはいなかに住む人よりも都会に住む人が多くなった。いなかは現在さまざまな問題を抱えている。大量に植林されたあと管理されない人工林、竹林の拡大、耕作放棄地など。さまざまある問題のうち根源的なものは人口の減少と高齢化。高校・大学に進学して都会に出た後戻ってこないことと、女性の生涯出生率が1.3と低いことがその原因。だいたい一世代経つと人口は半減する。

これは、若い人がいなかに移住しなければ解決しない問題。例えば設楽町(愛知県)の名倉小学校区という、人口1,000人程度のいなかの地域を取り上げると、仮に毎年1世帯、30代の子育て世代が移住し続けるとすると、子どもの数(小学生以下)が減らなくなり、人口が定常化する。

では実際に若い人はいなかに移住するのか。国の社会調査によれば若い人のいなかへの関心が増えており、実際の移住実績も、分かる範囲では増えている(特に2010年くらい以降)。

若者を対象とした里山への移住・定住を促進する取り組みを紹介したい。豊田市(合併後)は、いなか(市内中山間地)に住む人と都会に住む人との交流事業を続けている。それを発展させて、移住したい人向けに住む場所を提供すべく、空き家情報バンクを市が運営している。ここでは一つの物件に複数の申し込みがあり、地域の方々と移住したい人との面談をして、移住者を決定している(移住希望者に地域住民としてのつとめを理解してもらい、また地域として移住者を支援するため)。空き家はたくさんあるが、実際には家主が賃貸や売却に同意することは少ない。地域の親族・知人が都会に住む家主を地域のためであることを説得して初めて物件が出てくることがほとんどである(現状、説得には2ないし3年かかる)。

また、私の実験的試みとして、移住希望者にお金を小額負担してもらって、建築や機会の技術者ボランティアの支援も得て、地域の間伐材を利用した家作りを行った(太陽光発電も行う)。3年かかったがこのほど完成した(「宇宙(そら)の家」)。このように定期的に田舎に通いつつ、地域での暮らしに必要な知識・技術を身につけ、また地域の方々とのつながりを作っていくことが、移住・定住に有効であることがわかってきた。

いわゆる就職口はいなかにはないが、なりわいとして自分や地域に必要なものを自ら作り出していく可能性はある(また移住する若者は自らそのリスクを取っている)。そのような人たちを支援する仕組みとして、通いながらスキルを身につける豊森なりわり塾や、市が一定期間移住・定住の支援を行う豊田市版地域おこし協力隊といった制度がある。

いなかに移住してくる若者たちに共通するのは、丁寧なくらしをしたい、またお金にあまり依存しないくらしをしたい、という価値観である。そうはいっても自家用車の利用、子どもの教育、医療、納税などにはお金も必要である。お米と野菜、薪などを自給しつつ、自らのスキルでやりたいことをやってお金を稼ぎながら暮らしている。生活の質は低い面もあるが、人生の質は高い。

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