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センターからのお知らせ

2015年03月19日 公開シンポジウム「アジアにおける環境的に持続可能な交通(EST)」開催(終了しました)

持続的共発展教育研究センターでは、以下のとおり、国際連合地域開発センター(UNCRD)及び土木学会土木計画学研究委員会平成26年度第16回国際セミナーと共同主催で、公開シンポジウム「アジアにおける環境的に持続可能な交通(EST)」を開催しました。(開催パンフレット

日時:2015年3月19日(木) 13:00 - 17:00

場所:名古屋大学 東山キャンパス 環境総合館 1階 レクチャーホール 地図

シンポジウムのテーマ
 (1) アジア地域ESTフォーラムの成果
 (2) 2015年以降の途上国開発/持続可能な発展目標とアジア地域ESTフォーラムの関係
 (3) 科学者・研究者と民間部門がEST推進に果たす役割

シンポジウムの目的:日本の行政、研究、民間部門が途上国における持続可能な交通・発展の必要性を分かち合うとともに、EST推進のために民間・金融部門が果たす役割を議論する(討議結果は第9回アジアEST地域フォーラムで提示される)

シンポジウムの概要:

(開会の辞)

 まず最初に、開会の辞として、名古屋大学次期総長松尾清一教授からは、国内外から参加しているパネリストと来場者に対してお礼と歓迎の意が表明されました。そうして、名古屋大学がノーベル賞の受賞に代表されるような基礎研究や大学・大学院教育のみならず、日本およびアジアにおける社会連携活動にも力を入れており、本シンポジウムの共同主催者の一つである国際連合地域開発センター(United Nations Centre for Regional Development (UNCRD))とも協力して社会貢献に取り組んでいること、また社会連携のための仕組みとして大学院環境学研究科の附属組織として2014年4月に本シンポジウムの共同主催者の一つでもある持続的共発展教育研究センター(共発展センター)が設置されたことが紹介されました。そして本シンポジウムのテーマである環境的に持続可能な交通(Environmentally Sustainable Transport (EST))とは何か、について議論が深まることを期待すると述べられました。

 続いて、環境省関荘一郎地球環境審議官(代読・池田善一中部地方環境事務所長)からは、アジアEST地域フォーラムが、アジア地域におけるESTの実現を目指して環境省とUNCRDが2005年に共同で設立した、域内各国のEST関連省庁高官とEST関連専門家による、政策対話のための会合であることが紹介され、その上で、日本の環境政策・技術や、東日本大震災後のレジ
リエントな交通実現に関する知見をアジアで共有していきたいとの考えが示されました。

 開会の辞の最後に、本シンポジウム共同主催者の一つであるUNCRD高瀬千賀子所長より、本シンポジウムでは2014年にスリランカ・コロンボで開催された第8回アジアEST地域フォーラムの成果を紹介するとともに、気候変動・災害に対して復元力のある交通、また交通インフラ整備・維持に関する金融メカニズムの構築をテーマとして討議を行い、2015年に開催予定の第9回アジアEST地域フォーラムへの日本からの提言とすることが述べられました。またEST政策を推進するため、誰がどこでどのように問題解決するかを検討するとともに、地域内の好事例を特定して共有することが重要であると指摘されました。

(アジアEST地域フォーラムの成果)

 CRCMohanty_UNCRDサムネイル.JPG次に、「アジアEST地域フォーラムの成果」について、UNCRDより環境プログラムコーディネーター/エキスパートC.R.C. モハンティより、2005年の愛知宣言に始まるアジアEST地域フォーラムの経緯と成果について概説が行われました。その中で、12の側面に関して統合されたEST政策の重要性が確認されてきたこと、問題回避・交通手段転換・交通技術改善の3つの戦略が開発・採用されてきたことなどが説明されました。また2012年にブラジル・リオデジャネイロで開催された「国連持続可能な開発会議」(「リオ+20」)の成果文書「われわれの求める未来」の中では地方間及び地方内での交通結合がESTとして重要な論点であると指摘されました。また、2014年の第8回アジアEST地域フォーラムにおけるコロンボ宣言では21か国がより持続可能で災害や環境変化に対して復元力のある、低炭素な(省エネで温室効果ガスを出さない)交通の仕組みを作っていくことに合意したことが紹介されました。そして、現在国際連合において議論されている持続可能な発展目標(Sustainable Development Goals (SDGs))の17の目標のうち、目標11「包摂力があり、安全で、復元力があり、そして持続可能な都市と人間居住環境の実現」にESTが含まれるという説明がありました。

講演資料はこちら(上記画像のクリックでもご覧いただけます。)

(基調講演)

YHayashi_NU-SusCoDeサムネイル.JPG 引き続いて、基調講演「バンコク2020宣言を越えて」を、共同主催者の一つである共発展センターより、林良嗣センター長が、アジアEST地域フォーラムが取り上げてこなかったが重要な論点として、研究者の立場から、ESTのための統合的なツールについて紹介を行いました。具体的には、1) 都市交通における低炭素化、郊外化/自動車利用政策、コンパクト化など、2)持続性に関する分析手法(問題回避・交通手段転換・交通技術改善の3つの戦略と技術・規制・情報・経済インセンティブの4つの手法)、3)土地利用計画と産業・人口配置、そして4)持続可能性(サステイナビリティ)と復元力(レジリエンス)の概念整理・分析・提案、です。適用例として、バンコクの2050年の交通のあり方が取り上げられ、鉄道インフラの供給を増大すれば、鉄道交通需要も増大するが、自動車利用需要は減少し、全体としての交通需要は減少し、結果として生活の質(Quolity of Life (QoL))は向上する一方で、投下資本と温室効果ガス排出量は減少する可能性があるという分析が示されました。また、中国の華北平原では300km以上の広がりがあり、北京から石家荘に大気汚染源である工場を移転したが汚染量は変わらないのに対して、工場で生産される製品を北京に運ぶのに交通需要が増え、それにともなって大気汚染排出量が増えたことが指摘されました。

講演資料はこちら(上記画像のクリックでもご覧いただけます。)

(パネルディスカッション)

 基調講演のあとは、2つのセッションからなるパネルディスカッションが行われました。

[セッション1] 統合されたEST政策とレジリエンス(社会の復元力)

 セッション1「統合されたEST政策とレジリエンス(社会の復元力)」では、UNCRDのモハンティをファシリテーターとして、5人のパネリストの方々よりお話をいただいた後、統合されたEST政策とレジリエンスに関する討議が行われました。中国・清華大学交通研究所長の陸化普(ルー・フアプ)教授からは、「中国におけるESTに向けて」と題して中国のEST政策動向が報告されました。指標を用いた評価を行う円滑交通プロジェクト、公共交通プロジェクト、低炭素実験都市、及びエコ・シティ/低炭素都市プログラムが主要な活動として紹介されたほか、自転車利用促進やバス高速輸送システムの事例や、問題回避・交通手段転換・交通技術改善の戦略に沿って、それぞれ交通回数の削減、交通選択肢の多様化と共有、そして情報通信技術の活用が取り上げられました。

 インド科学大学土木工学部兼インフラ・持続可能な交通・都市計画センターのアシーシュ・ヴァルマ助教授からは、「新興経済国におけるESTとレジリエンス」に関して、インドの都市とブラジル、ロシア、中国の都市との比較から、総道路延長は長いものの人口あたりの道路延長は短く、歩行者事故も多いことなど、インドの特徴が説明されました。また、都市内洪水など自然災害に対する交通サービスの復元力に関しても、国家防災管理庁で交通が対象分野として含まれておらず、対処を要することが指摘されました。(配布資料はこちら)

 米国スタンフォード大学プレコート・エネルギー効率センターのリサーチフェローであるウェイ=シュエン・ング博士からは、「アジアにおける低炭素都市交通政策」に関して、燃料、技術、利用者行動、及び都市計画の観点から説明が行われ、バス高速輸送システム、需要に応じたサービス提供を行うスマート・パーキング、そして情報通信技術を活用したオフ・ピーク通勤の試みについて紹介がありました。(配布資料はこちら)

 国土交通省総合政策局環境政策課課長補佐の辻陽子氏からは、「日本のEST政策」の概要が説明されました。ESTモデルプロジェクト、公共交通促進、環境配慮型車輌促進(基準、免税;主要なEST施策)、交通ネットワーク構築による円滑な交通流確保、表彰・研修制度などが紹介されました。また、統合されたEST政策とレジリエンスとの関係について、再生可能エネルギーにより駆動される交通システムの構築、地震等の災害に強い交通システムの構築の2点が提案されました。

 東海旅客鉄道株式会社(JR東海)総合技術本部技術開発部執行役員/総合技術副本部長/技術開発部長の大竹敏雄からは、「東海道新幹線の50年間の変遷と超伝導リニア使用による中央新幹線」に関する報告がありました。2014年に開業50周年を迎えた東海道新幹線に関しては列車デザイン改良による空気抵抗の低下と速度向上、カーブにおける走行性能の改良と軽量化による速度・安全性の向上、及び電力回生システム改良によるエネルギー消費の削減が行われてきたことや、雪などによる遅延や故障に対処するためにさまざまな改善が行われてきたことも説明されました。これらの努力の結果、現在では列車あたり平均0.6分の遅れと、死亡事故ゼロの実績を達成していることが示されました。また1997年より実験を開始したリニア中央新幹線については、2014年に建設が許可されたこと、サービス向上、輸送力向上、路線二重化によるレジリエンス向上が目的であることが指摘されました。(配布資料はこちら)

 引き続いて行われたパネリストによる討論では以下の諸点に関して重要性が指摘されました:1)政策統合による、より良い土地利用計画と交通政策、2)後発者による、より適切な技術の選択、3)価格シグナルの活用、4)地域間・地域内交通結合の向上、5)ESTのための再生可能エネルギーの活用、6)EST施策によるレジリエンスの強化、及び7)統合された継ぎ目のない政策立
案・実施と科学に基づいた政策の立案・実施のための、適切な研究者と行政担当者の協働体制。

[セッション2] 官民パートナーシップ(PPPs)―ESTのための戦略的金融・投資

 続いて、セッション2「官民パートナーシップ(PPPs)―ESTのための戦略的金融・投資」では、共発展センターの林をファシリテーターとして、4人のパネリストの方々よりお話をいただき、官民パートナーシップ(PPPs)に関する討議が行われました。

 アジア開発銀行研究所リサーチフェローのビクター・ポンティネス博士からは、「持続可能な交通インフラのファイナンスとPPPs」に関して、世界及びアジアにおける交通インフラの資金需要、アジア途上国・新興国におけるPPPsのトレンド、プロジェクトファイナンスと制度的なツール、そしてPPPsが機能するための条件という観点から説明がありました。アジア地域においては、交通インフラの資金源の45%程度は中国を始めとするBRICs、シンガポールなどの政府系ファンド、25%程度は日本などの年金ファンド、そして10%程度は民間アセットマネジメント会社となる推計が紹介されました。PPPsが機能するには、充分な法・規制の整備や政府による信用供与など事業特性に応じて差異化された資金支援が必要であることも強調されました。(配布資料はこちら)

 日本高速道路インターナショナル(株)(JEXWAY)代表取締役社長の黒田孝次氏からは、「JEXWAYの戦略的ファイナンスと投資」と題してお話があり、21世紀の道路交通はこれまでとまったく違ったものになること、道路交通に関して第3次革命が起きておりGDP(国内総生産)からGNP(国民総幸福)を高めるための交通が実現すること、価値と持続性に配慮した交通を求めていること、環境に配慮した道路を構築していくこと、そしてそれらの実現に向けて「幸福」を重視した戦略的投融資をJEXWAYが行っていることが紹介されました。(配布資料はこちら)

 NPO法人「社会基盤ライフサイクルマネジメント研究会」(SLIM Japan)理事長の有岡正樹博士からは、「廃棄物と泥によるグリーン・ヒル―環境的に持続可能な観点としてのPPPプロジェクト(高波災害のビフォア・アフター)―」に関して説明があり、東日本大震災後のガレキとヘドロとを活用した津波被災地の防災を考慮した再整備計画において、30年間の維持管理とモニタリング・評価のコスト(総コストの約30%)を組み込んだ上で、実際に採用された方法の費用よりも約半分の費用で実施可能なプロジェクトを提案したが不採用となったこと、南太平洋の島嶼国での活用を現在提案中であること、開発インパクト債として資金調達を考えていることが紹介されました。(配布資料はこちら)

 豊田市役所都市整備部交通政策課長の西和也氏からは、「活力ある低炭素都市・豊田市」を題材として、豊田市におけるEST政策が紹介されました。豊田市が産業都市であると同時に市域の7割が森林となっていることから、日本の縮図であるとの指摘があり、その上で、国に公募・選定された「環境モデル都市」として交通、産業、都市部、家庭及び森林の各部門で二酸化炭素排出の削減に取り組んでいること、また「とよたエコフルタウン」でさまざまな低炭素技術・取り組みのデモンストレーションを行っており海外からの訪問者が多数あること、が紹介されました。特に交通部門で、歴史的にバス及び自転車・徒歩の分担率が下がり、自動車利用率が上がり続けてきたが、民間事業者、市、そして地域住民が一体となった取り組みの結果、最近6年間はバスの利用者が増加しており、日本では大変珍しい現象であることが指摘されました。また、豊田市の取り組みに関して、名古屋大学大学院環境学研究科加藤博和准教授より、バス路線を幹線と支線とに分けて交通ネットワークをデザインしていることが先進的であるとのコメントがなされました。(配布資料はこちら)

 引き続いて行われたパネリストによる討論では、拡大・成長を続ける都市における、統合された継ぎ目のない包括的EST政策を常に追求し続けることの重要性が指摘されるとともに、成熟した都市における地方・郊外団地向けのローカル公共交通の整備も重要であることが指摘されました。またマクロな経済変動が起こるときに交通システムが崩壊しないためにどのような安定措置が事前・渦中で取りうるかという論点が提示されました。さらに、個人・市民が責任と役割とを担う交通の仕組みとして、東日本大震災後の都市計画・交通計画における自治体の役割、住民による自治の重要性が議論されました。さらにPPPsにより整備された交通インフラが再投資を可能にする収益を上げているオーストラリア・シドニーのハーバートンネルの事例から、資金調達の新たな可能性が示されたり、同時に、PPPsが万能薬ではないという指摘が行われたりしました。同時に、情報通信技術を人・車輌・道路との関係制御に使った第3次交通革命が進行中であることが指摘されました。

(閉会の辞)

 シンポジウムの最後に、名古屋大学大学院環境学研究科長久野覚教授より閉会の辞が述べられました。ESTに関しては、いろいろなレベルでさまざまな問題があることが本シンポジウムで示されたことから、統合的にいろいろな問題を扱っていくことが今後も重要になるのではないか、との感想が示されました。

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==========(参考)==========

来ていただきたい方々:日本の科学者・研究者、民間部門、国・地方政府、一般市民

プログラム(案)

13:00 - 13:20 開会の辞

名古屋大学次期総長 松尾 清一 教授
国際連合地域開発センター所長 高瀬 千賀子 氏
環境省代表

13:20 - 13:45 「アジアEST地域フォーラムの成果」 (UNCRD)

国際連合地域開発センター 環境プログラムコーディネーター/エキスパート C.R.C. モハンティ 氏

13:45 - 14:10 基調講演「バンコク2020宣言を越えて」(名古屋大学・共発展センター)

名古屋大学大学院環境学研究科附属持続的共発展教育研究センター センター長 林 良嗣 教授

パネルディスカッション

14:10 - 15:20 セッション1:「統合されたEST政策とレジリエンス(社会の復元力)」

<パネリスト>
国際連合地域開発センター 環境プログラムコーディネーター/エキスパート C.R.C. モハンティ 氏
清華大学交通研究所長 陸 化普(ルー・フアプ) 教授
インド科学大学土木工学部 兼 インフラ・持続可能な交通・都市計画センター アシーシュ・ヴァルマ 助教授
スタンフォード大学プレコート省エネルギーセンター リサーチフェロー ウェイ=シュエン・ング 博士
国土交通省総合政策局環境政策課 課長補佐 辻 陽子 氏

15:20 - 15:30 休憩

15:30 - 16:40 セッション2:「PPP-ESTのための戦略的金融・投資」

<パネリスト>
名古屋大学大学院環境学研究科附属持続的共発展教育研究センター センター長 林 良嗣 教授
アジア開発銀行研究所 リサーチフェロー ビクター・ポンティネス 博士
日本高速道路インターナショナル(株) 代表取締役社長 黒田 孝次 氏
NPO法人「社会基盤ライフサイクルマネジメント研究会」(SLIM Japan) 理事長 有岡 正樹 博士
豊田市役所都市整備部交通政策課長 西 和也 氏

16:40 - 16:50 まとめ(UNCRD、共発展センター)

16:50 - 17:00 閉会の辞

言語:日英同時通訳

入場:無料

*プログラムの詳細はこちらをご覧ください(PDFファイルが開きます)。