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センターからのお知らせ

2021年08月27日 農林業生産と環境保全を両立する合意形成手法の開発:生態系サービス向上と両立するICT技術による圃場・森林管理システムの開発、実装

農林業、農村において科学的な情報の活用が求められている

 農村地域において人口・担い手が縮退する状況下では、生産に加え、環境保全・獣害・防災といった戦略的な判断が求められると言えます。本プロジェクトでは、中部地方及びその周辺地域の基礎自治体において、都道府県、省庁等と連携しながら、集落レベルの土地利用方針を構想するための、科学的情報の評価、可視化、地図化を行うシステムの提案を目指しています。

 農業分野では、縮小する労働力を効率的に活用するのを目的として、生物多様性を深く考慮しない圃場整備が進められてきました。水田と水路は、自然湿地の代替地としての生態系サービスを提供してきたが、その機能が失われてきたと言えます。また、林業分野においては、広葉樹天然林等の自然林化・針広混交林化が検討されているものの、人的資源が大きな制約となっています。このような状況において、国・県に加えて、各地の自治体が地域の環境条件、社会・経済的動態に対応した管理計画の作成により直接的な役割を果たす方向にあります。

現代、そして、将来世代の地域の構想、ニーズを把握する

 集落レベルの土地利用方針を構想するための科学的情報を評価、地図化するシステムの提案を目指して、住民、農林業関係者等によるコミュニティ・ミーティングを2020年度より松阪市飯高地域において香坂玲教授を中心として実施しています。一連のミーティングと聞取り調査では、これまでの土地利用・管理政策及び集落レベルでの土地利用、科学的情報の活用実態、ニーズ、課題についての実情について聞取りを行っています。

 さらに、将来世代が生きる社会を未来人として話合い、地域の持続可能性に貢献する取組みを構想するフューチャー・デザインを活用したワークショップも飯高地域において実施しています。ワークショップでは、ICTを活用した炭素固定に貢献する針広混交林の効率的な管理、小さな拠点づくりによる生活サービスの維持などのアイディアが話し合われました。

地域と連携したマッピングシステムの持続的な運用を目指す

 2021年度には、地域の農業、林業についての労働力・コストの調査を継続しながら、マッピング合意形成システムのプロトタイプを開発、活用していく予定です。

 地域の住民、農林業関係者のみなさんからご意見を頂き、データを収集したシステムは地域の農地、林地の持続的な管理のために継続的に活用されていく必要があります。普及のマニュアル作りも地域と連携しながら行っていきます。

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地域住民の方への調査の様子

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椪積み(はいづみ)された丸太