名古屋大学グローバルCOEプログラム 地球学から基礎・臨床環境学への展開

BCES

臨床環境学

東南・南アジア

われわれはこれまでに、南アジアモンスーン変動、バングラデシュ洪水予測、ラオス農村環境変化、東南アジア火山地震津波災害、西太平洋サンゴ礁環境変化、サラワク熱帯林環境、ヒマラヤ・チベット氷河変動など、さまざまな環境問題に関わる研究を東南・東アジアにおいて展開してきました。

その中でラオスの事例を紹介します。森林率が70%近くあるラオスは、天水田農業に依拠している自然豊かな国ですが、現在まさに開発の嵐が押し寄せつつある状況にあるといえます。同じ東南アジアのタイやベトナムで起こってきたことと同様に、安い労働力を求めて工場誘致が進み、森林が伐採され農地化されるといった環境破壊が進行しつつあります。首都ビエンチャン周辺の農村では、昔ながらの森や小川からの生物資源を自給自足するいわば自然と共生した生活形態と、市場経済のもとでの生活形態とが共存した状態にあります。このようにラオスの農村では、自然生態系の維持や持続性に関する問題から、土地利用の変化に伴う環境問題、社会的な仕組みの変化に伴って起こる社会科学的な問題など、さまざまな視点から環境に関わる課題を見出すことができます。

例えば、森林減少に代表される土地利用の変化に対して、国際援助や、温暖化対策としての植林が進められ、また環境政策の一環として伝統的な農法であった焼畑が禁止され、商品作物のための常畑化が進んでいます。また、共有林の分割私有化が進み、生業の変化などの社会構造の変化をもたらしています。このような状況は、森林面積を回復し維持するという効果をもたらす一方で、水や物質循環、および生物多様性に大きなインパクトを与え、また更なる環境負荷の可能性を増大させているといえます。これは、先進諸国の判断で「治療」として考えられ実施された方策が、実際には「大きな副作用」をもたらしかねないことを示す事例です。このような現状を、さまざまな専門分野の院生・教員がチームを組んで、現地スタッフとともに調査、議論し、「副作用」の少ない総合的な治療法を模索していくことは、まさに臨床環境学の構築につながると考えます。

ラオスにおける具体的な課題例は以下のとおりです。

  1. 焼畑禁止政策がもたらした影響評価
  2. 森林による生態系サービスの評価
  3. 森林伐採による地下水位変化と塩類移動
  4. 土地利用の変化と将来シミュレーション

ラオス以外の国においても同様に、臨床環境学の構築につなげる研究を展開していく予定です。

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