名古屋大学グローバルCOEプログラム 地球学から基礎・臨床環境学への展開

BCES

臨床環境学

環境学の研究は、非常に多くの分野からなります。地球温暖化を予測する気候学の研究、汚染物質を除去する化学工学の研究、低炭素社会を実現するための経済学の研究などなど、枚挙に暇がありません。これまで、それらの研究は、ともすればバラバラに行われ、異なる分野の研究者間の協力は必ずしも進んでいませんでした。本グローバルCOEプログラムでは、環境学を「診断型分野」と「治療型分野」の2つに大くくりにしていますが、分野間の意志疎通の停滞は、「診断を無視した治療」や「治療の役に立たない診断」など、環境問題の解決には程遠い状況を、環境研究の現場で、しばしば作り出してきてしまいました。深刻化する環境問題を真に解決していくためには、今こそ、環境学を構成する多数の分野を統合していく必要があります。

では、どうすれば、環境学の統合が可能なのか。我々は、まず、異なる分野の研究者が、環境問題が生じている現場で具体的な問題を共有し、互いに協力し合って問題の原因を解明してその解決策を検討し、解決策の実行を通じてさらに問題を深く理解していく、その一連の取り組みこそが、環境学の統合に最も有効であると考えています。それが、臨床環境学です。臨床環境学では、単に名古屋大学の研究者だけではなく、国内では、行政やNPOなど、地域で環境問題に関心を持つ多くの人々と、海外では、現地のカウンターパート機関などと、密接に協力して、問題の解明から解決、事後評価にいたる、一連の取り組みを進めていきます。

臨床環境学を実践していくための具体的なエリアとして、本グローバルCOEプログラムでは、大きく3つの領域、即ち、「伊勢湾流域圏」、「北東・東アジア」、「東南・南アジア」を対象として、研究計画の立案を進めています。それぞれの地域では、既に、名古屋大学の多くの研究者の手による「診断・治療」、「文系・理系」にまたがる様々な環境学の研究実績があり、それらを土台として、多分野の結集による統合的な環境学の創造を進めていきます。上記の3つの領域は、それぞれ順に、「経済が成熟したエリア」、「高度成長期にあるエリア」、「これから開発がすすむエリア」に相当し、その段階に応じた異なる問題群が存在すると共に、地球規模の環境問題や経済のグローバル化の進展によって、エリア間で共通した問題も顕著になってきています。

臨床環境学の研究では、個別の地域における具体的な問題に協力して取り組むことで、環境学の多分野の実践的な統合を図ると同時に、臨床の現場を超えた知、すなわち地域間・問題間で共通する課題(=環境問題の基底構造)を、基礎環境学における課題別講究の取り組みと協力して、明らかにしていくことも、目指しています。

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