名古屋大学グローバルCOEプログラム 地球学から基礎・臨床環境学への展開

BCES

セミナー

いま解け始めた生物分布の謎―繁殖干渉による近縁生物の駆逐―

スケジュール

2014年1月31日(金)16:30-18:00
環境総合館2階 第2会議室

講演者

西田佐知子(博物館・環境学研究科 准教授)

問い合わせ

佐藤永(COE特任准教授)

詳細

生物は自分の生存できる範囲に分布している?私達はこう漠然と考えがちだが、これは本当だろうか?実際には、生物は生存や繁殖が可能であるはずの領域よりずっと限られたところにしか分布していない。また、それぞれの種の分布域が変化するなか、分布が重なる機会もあったはずなのに、近い種類の生物が一緒に混じって生息していることはほとんどない。こうした分布の制約はいったいなぜ起こるのだろうか?
こうした謎を解く鍵として、いま注目を集めているのが「繁殖干渉」である。繁殖干渉とは、ある生物種が繁殖時、(とくに近縁な)相手種に悪影響を与える現象をいう。繁殖干渉は、相手種から同種との交配機会を奪ったり雑種を作ったりすることで、相手種の正常な子孫を減らす。すると次世代では干渉する側の頻度が相対的に増えるため、干渉がより強くなり、ますます相手種の子孫を減らし、やがては相手種を分布域から追いやってしまう。
私達の研究グループは、繁殖干渉が近縁種の分布に与える影響をリアルタイムで調べるため、タンポポなどの外来種と在来種を対象に研究を進めている。在来タンポポが外来タンポポによって分布域から追いやられているとよく言われるが、実際に駆逐されているかどうかは地域によって異なっている。近年私達の研究によって、こうした違いの多くが繁殖干渉の有無で説明できること、タンポポの繁殖干渉は、在来タンポポの雌しべが外来タンポポの花粉を同種とまちがって受け入れることで起こることが明らかになった。この成果は、外来近縁種による在来種駆逐を防ぐための保全事業にも貢献できる可能性が高い。
繁殖干渉は、生物の種間相互作用における重要な現象であり、今後の生態学に大きな変革をもたらす可能性がある。繁殖干渉は、近縁種同士が滅多に混在しないというダーウィン以来の謎を解く鍵であり、また、近縁種同士の食性や繁殖様式における違いを生み出す原動力かもしれない。

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