名古屋大学グローバルCOEプログラム 地球学から基礎・臨床環境学への展開

BCES

セミナー

水循環を介したボルネオ島の熱帯雨林と気候の相互作用

スケジュール

2013年2月6日(水)11:00~12:00
環境総合館5階講義室(516号室)

講演者

安成哲三(名古屋大学地球水循環研究センター・特任教授)

問い合わせ

佐藤永(COE特任准教授)

詳細

マレーシア・サラワク地域を含むボルネオ島は、赤道直下のインドネシア海洋大陸に位置する最大の島であり、東南アジアの熱帯雨林の中心地域でもある。この島は、暖水プールと呼ばれる30℃を超える温かい海水の海に囲まれており、この地域の湿潤熱帯気候は、この暖水の存在が決めているといわれている。この島の熱帯雨林の存在には、このような気候条件が基本的な要因と考えられてきた。しかしながら、1990年代から始まったサラワクでの生態・水文気候学的観測研究や、1998年に打ち上げられた熱帯降雨観測衛星TRMMによる降雨観測データなどは、この島を覆う熱帯雨林がどのような水文気候学的条件で成立しているかを明らかにしてきた。赤道直下で季節変化の小さくほとんど乾季のないこの島での蒸発散量は、サラワク熱帯雨林でのタワー観測から、ほぼ平衡蒸発散量に等しいことが明らかになった(Kumagai et al., 2005)。さらに、大気中の広域水蒸気輸送量を用いた大気水収支法によるボルネオ島全体での蒸発散量は降水量の70?80%を示しており、降水に必要な水蒸気量は大部分、地表面(熱帯林)からの蒸発散に依存していることが示された(Yasunari, 2006)。これらの事実は、ボルネオ島熱帯雨林を維持している降水量が、まわりの暖かい海からの水蒸気の流入による量よりも、熱帯雨林そのものが出す蒸発散に依っているという水循環特性を強く示唆している。すなわち、この島の熱帯雨林域では、熱帯雨林自らの光合成に伴う蒸散により、必要な雨の大部分を賄っていることを意味している。この事実は、20世紀後半から進んでいる熱帯林破壊の地域的な水文気候への影響を考える時、非常に深刻な意味を持っている。講演では、特に1980年以降の森林破壊とこの地域の広域水収支の変化について、さらに議論したい。

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