名古屋大学グローバルCOEプログラム 地球学から基礎・臨床環境学への展開

BCES

セミナー

ブナ天然林における光合成特性の個葉から樹冠へのアップスケーリング ~その特徴と課題~

スケジュール

2012年5月18日(金)16:30-18:00
環境総合館2階 第2会議室

講演者

飯尾淳弘(国立環境研究所)

問い合わせ

COE特任准教授 佐藤永(

詳細

アップスケーリングとは細胞や個葉など小さなスケールで得られた情報を、個体や群落、流域などのより大きなスケールへ情報の互換性を確認しながら拡張することである。個葉の機能(例えば光合成能力)が群落全体の生産量や成長に果たす役割を評価する際には欠かせないアプローチであり、その結果はプロセスモデルとして集約、体系化される。リモートセンシング技術の発達により、個葉の生理生態情報を全球スケールでシームレスに取得可能になり、アップスケーリングは身近なものになった。とくに個葉から樹冠スケールでは、アップスケーリングの結果を渦相関法や樹液流計測で検証できるため、研究が盛んに行われ、そのプロセスはBig-leafモデルに集約されつつある。ところが、そのような単純なモデルは未検証の仮定を数多く含んでいる(資源の最適分配や葉のランダム分布など)。例えモデルの出力結果が検証値と一致していてもこうした仮定を検証しないと、モデルを応用、拡張した際に(例えば、シミュレーションによる気象変動影響予測、多林分への適用、反転による生態系機能評価など)予測結果に大きな不確実性を生じてしまう。

そこで、新潟県苗場山のブナ天然林を対象として、樹冠光合成量の予測に必要な、構造(葉面積)、内部光環境、光合成機能の時空間的変化を詳細に調べ、できる限り不確かな仮定を排除したアップスケーリング(プロセスモデルの開発)に取り組んできた。セミナーではモデルの構築過程で得られた結果を利用して、詳細なアップスケーリングを行うことの重要性や特徴、課題を説明する。具体的な内容は、(1)光合成の短期的環境応答、(2)長期的環境応答、(3)樹冠内の葉と光の3次元的空間分布、(4)モデルの応用例;結実の豊凶が樹冠光合成量に与える影響 である。(1)では、光合成の温度順化(最適温度の変化)を考慮した個葉ガス交換モデルを使って、機能の定量評価の重要性を確認する。(2)では、気象の年次変化が個葉の光合成能力に与える影響を説明する。生態系の気象変動影響予測には欠かせない情報だが、研究が不足しているトピックのひとつである。(3)では、光の分布を詳細に再現できるモデルを利用して、分布を単純化した場合とそうでない場合の樹冠光合成量を比較し、詳細にプロセスを再現する重要性を示す。最後のまとめでは、現在取り組んでいる葉面積指数の全球メタ分析の結果を示しながら、アップスケーリングの課題とこれからの展望を説明したい。

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