名古屋大学グローバルCOEプログラム 地球学から基礎・臨床環境学への展開

BCES

特任教員/COE研究員

広田 勲

氏名 広田 勲 廣田 勲
所属・身分 大学院環境学研究科・COE研究員(PD)
居室 環境総合館1階101号室
メールアドレス
研究キーワード 焼畑、ラオス、自然資源利用、タケ

メッセージ

私はこれまで、ラオス北部をフィールドとして調査を行ってきました。ラオス北部は山がちな地形が卓越し、伝統的には山地斜面では焼畑による陸稲栽培、山間盆地の水田では水稲栽培が行われてきました。また、焼畑地では陸稲栽培以外にも様々な作物が混作され、休閑林でも野生動物や非木材林産物などが採取されてきました。同様に水田においても、水稲以外にも水田雑草、魚、昆虫などが重要な産物として現地の人々に利用されてきました。このようにラオスの農耕地生態系は、伝統的に多様な生産空間を提供してきたということができます。

しかし、一方で近年では、山地斜面ではゴムの植林、商品作物栽培が拡大するとともに、水稲も商品作物的な意味合いが強まり、土地利用が変化しつつあります。このような新しい土地利用に対して、これまでの土地利用はどのように変化していくのか、また、伝統的な土地利用、自然資源利用の知識が、新しい土地利用にどのように適用することができるのかということに取り組んでいきたいです。

研究テーマ

ラオスの山地部の人々の伝統的自然資源利用の知識と技術

私のこれまでのフィールドはラオス北部ですが、そこで特に焼畑休閑林の植生動態や機能について研究を行ってきました。

メッセージでも述べたように、焼畑農業のシステムは、焼畑によって攪乱された環境が全体として利用されるシステムになっています。したがって、地域の人々の資源利用の知識や技術も、その地域の生態環境のシステムを全体的に利用できるくらい豊富に蓄積されています。例えば動物の捕獲に関しては、民族独自の暦や月齢に応じた暦を使用し、ワナを設置したり、狩りに出かけたりします。また、これらの暦に従って焼畑地や休閑地における農作業を行う日や場所を決定したりします。ワナの設置場所についても、どこにどのような動物がどれくらい存在しているのかが村人なりに把握されており、その知識に基づいて設置されます。また植物やキノコ類についても同様に、生育に適した環境や、生育特性、資源の分布域や量などが経験的に把握されており、これらの知識を利用した採取が行われます。
すなわち、地域の人々は、自身の周辺の生態系の動態を総合的に把握し、それぞれの動植物の生育場所、それぞれの動植物の生活環や生育特性を踏まえ、さらにこれまで蓄積されてきた伝統的な知識を踏まえて、日々の行動を決定しているといえます。これからは、その伝統的知識の全体像を明らかにし、生態系の動態と伝統的知識の関連性について研究していこうと思っています。

タケの生態的な動態と文化的な役割の解明

タケは、アジアにおいては広く利用され、ラオスでも90種程度が報告されている植物資源であり、野生種、栽培種を問わずそのほとんどが利用されています。

タケは、日本でも人里の近くなど人の手が入る場所に生育しますが、ラオス北部では主に焼畑休閑林に生育しています。近年焼畑の休閑期間の短縮が問題視され、森林面積減少や森林の質的な劣化の主因であるという指摘が多くなされるようになっています。これらの指摘は、ほとんどが焼畑休閑林の連続的な遷移を仮定して議論が組み立てられていますが、ラオス北部における研究では、タケの一斉開花という不連続な出来事も、地域の植生に大きな影響を及ぼしていることがわかってきました。ラオスのタケの一斉開花は、一種に限定すれば数十年というサイクルをもっているものもありますが、ラオスではタケは多種存在しているので、平均すれば5年に1回程度で、何かしらの種が開花しています。タケの一斉開花という自然の一大イベントが、近年の大きな社会変化、土地利用変化と重なって起こったときに、自然植生に対してどのくらいのインパクトがあるものなのか、またそのタケを利用している人間社会にどの程度の影響があるのか、という疑問をこれから明らかにしていきたいと思っています。

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図1. 焼畑耕作地と休閑林に広がる竹林

図2. 焼畑地に仕掛けられたka thipとよばれるワナ

略歴

2002年3月 京都大学農学部卒業
2009年3月 京都大学大学院農学研究科博士課程修了農学博士(京都大学)
2009年4月 京都大学大学院農学研究科研究員
2009年5月 ラオス国立農林業研究所研究員
2009年10月 現職

論文・著書

  • 廣田勲, 中西麻美. 2007. 「竹林」、秋道智彌編、『図録 メコンの世界?歴史と生態?』、弘文堂. pp22-23.
  • 横山智, 落合雪野, 廣田勲, 櫻井克年. 2008. 「第5章 焼畑の生態価値」、河野泰之編、『論集 モンスーンアジアの生態史 第1巻 生業の生態史』弘文堂 pp.85-100.
  • 廣田勲, 中西麻美, 縄田栄治, 河野泰之. 2008. 「第8章 東南アジア大陸部の焼畑と村落の変容」、クリスチャン=ダニエルス編、『論集 モンスーンアジアの生態史 第2巻 地域の生態史』弘文堂pp165-180.
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